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カンクン&トゥルム滞在記

6.1.2002 - saturday

おとさまとおかさまはビーチへ。
わたしはぼけぼけとひたすら本を読む。

ふだんあまり水分を取らないほうのだけど、
それは湯をわかしたり、コップや氷を用意するのが
面倒だからであって、いえばでてくる環境に置かれてみれば、
コーヒーだージュースだーとバンバン頼みまくるわたし。
おかげさまで毎日快便なのだった。ありがたや。

昨日で、すっかり自信をつけてしまったおとさまは、
ホテル内のスポーツショップで、水中メガネを購入し、
覚えたばかりのシュノーケルに夢中らしい。

夕方近くなって、トゥルムのダウンタウンにでも
遊びにいってみようかな、とふと思い立つ。
むこうでタクシーが拾えるかなあ。

コンシェルジェおじさんに聞いてみよう。
と思ったら、こないだのおじさんではなく、
は虫類系のにいさんが座っておった。

トゥルムのダウンタウン?
へっ、あんなとこ、なんにもありゃしませんよ。

感じわるぅーい。なんじゃいオマエ。
あっそう! そいつぁおおきにお世話さまっ!
エイヤとばかりにデスクを蹴飛ばして(ウソですよ)
ポーターにいさんに、タクシーの値段を聞いてみる。
6ドルだったかなあ、そのくらい。

タクシーはむこうでも拾えるらしいので、
おとさまとおかさまを誘って、ダウンタウンへ。

「このあたりがダウンタウンですけど」と
タクシーのおじさんがいい、黙り込むわたし。
トゥルムのセントロ
態度がわるいだけで、は虫類にいさんは正しかった。
なんにもない、というわけではないけど、
わたしの「ダウンタウン」というイメージとは
大きくかけ離れた光景であった。

でも、せっかくきたんだしー。ぶらぶらと散歩する。
写真を撮り損ねたのが悔やまれるのだけど、
とてもかわいいホテルがあった。いいなあ。
ひとりだったら、こういうとこに泊まるだろうなあ。

ポツポツと並ぶバーや土産物屋をのぞいて歩く。
通りにも店の中にも、あまり人がいなかった。
バーのサッカーイラスト看板
バーの店先で、サッカー絵つきの看板発見。
おお。コリア。ジャパン。なんでこんなとこに?
「ワールドカップや。メキシコもでるんやなー」とおとさま。
はて? 首をかしげるスポーツ音痴のわたしとおかさま。

土産物屋の店先で、おかさまが服を見る。
絞り染めというのか、涼しげなブラウスとパンツ。
「これ、上下でいくら?」とわたし。
「500ペソ」と店のおばあちゃん。バカいえ。ワハハ。

「おかーさん、いくらなら買う?」
「うーん。20ドルくらい?」

200ペソといってみる。
気絶寸前、といった表情になるおばあちゃん。
そうだよね、ごめんね、ハハハ・・・いちど店をでたものの、
奥へ引っ込んだおばあちゃんがまたでてきて、
おーいおーい、と手招きするので、一同逆戻り。

おばあちゃんは手にしたノートを広げ、
「これは仕入れ台帳なのだ」という。
ここを見ろ、ほら、これが仕入れ価格で・・・

どうにもウソくさい数字が並んでいるものの、
真実であれ、ウソであれ、クソまじめな顔で
ここまでする人はけっこう好きだったりする。

いずれにせよ、どこかでお土産を買うべしと思っていたので、
こっちもまじめな顔をして、ふむふむとうなずく。

じゃ、その値段に10ペソ足して、これもつけてえ・・・
と細かいことをやっているうちに、だんだん品数が増える。
深皿、灰皿、ネックレスなどなど。
そう安くはないのだけど、まあいっかなという
値段になったので、商談成立。どもども。握手。

しかし、やはりここでも物価が高いと思った。
最初のいい値からして、バカに高いなあ、と思う額なので、
わたしの想像する数字がまちがっているのだろうなあ。
というより、グアテマラが安すぎたのかも。

そういえば、この店にもネコがいた。
茶色のシマシマの痩せたコで、こっちにおいでおいで、
チッチッと舌を鳴らしたら、ピューッと逃げてしまった。

土産物もゲットしたことだし、と
流しのタクシーを拾い、ホテルへ帰る。

夕食は、グリル系レストランへ。
なにを食べたか、ぜんぜん覚えていないのだけど、
食後にコーヒーを頼んだら「ない」といわれる。
そうだ。そういえばここにはなかったっけ。

「いや、でも、アメリカン・コーヒーはないのですが、
 マヤ・コーヒー、メキシカン・コーヒーならあります」

なんだそれは?
にいさんの説明によると、アルコールが入ってしまうので、
わたしは飲めないのだけど、なんだかおもしろそうなので、
ためしに3人分頼んでみる。

やがて、ゴロゴロとカートを押したにいさんが登場。
カートの上には、なんか知らん、コーヒーに使用する
道具とは思えないものも並んでおった。

「ブランデーとテキーラ、どちらがよろしいですか?」
「ブランデー」とおとさまとおかさま。

はい、とうなずいたにいさんは、ミルクピッチャーのような
陶器にブランデーを注ぎ入れ、固形燃料ふたつに火をつける。
火であぶられつつ、ふたつの陶器を往復するブランデー。

ここまで順調だったのに「あのう・・・」とにいさん。

「はい」
「たいへん申し訳ないんですけど、
 いったん席を代わっていただけますか?」

風があると、どうもうまくいかないらしい。
レストラン中央あたりのテーブルへ移動。

わたしは気がつかなかったけど、すでにこのとき、
あのアジアな家族はなにを注文したのだ、とばかりに
周囲から注目の的だったらしい。恥ずかしいがな・・・

にいさんはブランデーをあぶる。ひたすらあぶる。
ブランデーに火をつけるのが目的なのだろうけど、
なんでこんな手間をかけるのだろう・・・

といぶかっていたら、陶器から陶器へ移動するブランデーが
ポッと光った。かと思ったら、たちまち火がまわる。
青白い炎となって、シュルルと滝のように流れるブランデー。
うわあ・・・すごいすごい! きれーい!!!

店内、割れんばかりの拍手。ピーピー!!!
にいさんは多いにテレながらも、とても自慢げ。

感動のあまり、そのあとなにを入れたのか忘れてしまったけど、
メキシカン・コーヒーは、ワイングラスに入ってやってきた。
最後に、ブランデーを含ませた砂糖つきスプーンに
ぽっと火をつけて、ワイングランにのっけてくれた。
「はい、どうぞ」ありがとうありがとう。

わたしは、体質的に受けつけないのもあるけど、
それ以前に、アルコール系の味が苦手なのだ。
しかし、これだけやってもらって(15分はかかったと思う)
気軽に残すわけにもいかぬ。ど、どうしよう・・・

「あれだけやったら、アルコールなんかぜんぶ抜けとるで」
おとさまがいうので、ちょっと飲んでみる。ごくり。
うげー。マッズーイ。罰当たりなわたし。

おとさまが「飲んだるわ」というので、
へこへこしながらグラスを渡す。ぜんぶ飲んでね。へこへこ。

「おれの時代にはなあ、こんなに凝ってないけど
 カフェ・ロワイヤルというのんがあって・・・」

おとさまの昔話の途中で、ふとまわりを見たら、
むこうのほうのテーブルで、さっきのにいさんが
ふたたびブランデーだかテキーラだかを温めておった。

ウエイターを捕まえて、あれを、という感じで、
指さしていたカップルもいたので、このあと
3回目のメキシカン・コーヒーを作らされるのであろう。

あの陶器、そう重たいものでもないだろうけど、
ブランデーを往復させるたびにあげたりさげたり、
延々とくり返すので、けっこう腕が疲れるのではないか。
がんばれにいさん。ひっそり声援を送る一家。

メインの建物の横ちょに、いくつか夜店がでていたので、
食後、天然染料のテンポラリー刺青を入れてみる。
刺青だー
場所をてきとーに指示したのが失敗だったけど、
いや、かわいいなあ。この柄は10ドルだった。

部屋に戻り、おとさまおかさまに見せびらかし、
自分でもなんどもなんども見る。うれしいなー。
2〜3週間は持つっていってたっけ。うっふっふ。

とニヤけていたのだけど、1週間ですっかり消えてもうた。
しくしく。やはり本物を入れたい・・・

おとさまとおかさまはナイトショーにでかける。
今夜は唄のショーらしく、告知掲示板には
  1. リッキー・マーチン
  2. ブルース・ブラザーズ
  3. セリーヌ・ディオン
  4. マドンナ
  5. プリンス
と書いてあった。やけに濃いなあ・・・

わたしはバルコニーで本を読む。
2册連続でスペンサー・シリーズなので、
すでに気分はすっかりハードボイルドなのだった。
タバコを持つ手つきも、そことなくキザッぽくなったりして、
これでバーボンでもすすっていると、さらに盛りあがるのだけど、
手にあるのは、プラカップ入りのパイナップル・ジュースだった。

シアターのほうから、歓声が聞こえてくる。
トゥルムのリッキー・マーチンが唄っているらしい。
なにげに聞いていたのだけど、みんなうますぎる。
カラオケじゃなくて、そのまま原曲を流してるのかな。

やがて、おとさまとかさまが戻ってきた。
「どうだった」と聞いたら「おもしろかったー」
いやあ、ホテルの特典をフルに楽しんでおるなあ。

リッキー・マーチンがいちばん人気がなかったそうで、
そりゃそうだろう、とうなずくわたし。
他の4組は、メイクや衣装でごまかせそうだけど、
リッキー・マーチンはちょっと難しそうだ。

ニヤけすぎのリッキー・マーチンや
貧相な肉体のリッキー・マーチンがでてきたら
わたしでもビール瓶を投げるかもしれない。

そのあと、ジジババはあえなく撃沈。
わたしは引き続き読書タイム。

2時間くらいして、さて、寝るか、と本を閉じ、
おかさまが干した洗濯物を、しぶしぶ取り込む。

だれもやってないでしょ、干すなら室内で、と
カンクンにいたときになん度も注意したのだけど、
まったく聞いていないので、もうあきらめ、
しかし、寝ているうちに飛んでいくとめんどうなので、
夜間はわたしが取り込んでいたのだけど・・・

て、なんだこれは。

ぜんぜん気がつかなかったけど、下着はもちろん、
おとさまのおっさんパンツまで干してある。
がーんがーんがーん・・・

Tシャツやタオルまでにしてくれ、
下着だけはぜったいに干してくれるな、と
あれほど、あれほど懇願したのに・・・ぶち。

度合いからしたら、これがいちばん噴火率が高かった。
これくらいの頼みすら聞く耳もたんのなら、
わっしゃあもう別行動とさせてもらうわい!!!
そうだ、ダウンタウンのあのホテルに泊まろう!

もし、このときまでおかさまが起きていたら、
売り言葉に買い言葉で、荷物をまとめて、
確実にダウンタウンへ出発していたであろう。
ムスメ、旅先で家出状態である。大人げない。

しかし、寝ているものをたたき起こすのは
いくらなんでもフェアではないよなあ。くそお。
この怒りをいったいどこへ持っていけばいいのだ。

とりあえず、洗濯物を取り込んで、バスルームに干す。
ちょっとそこでイビキかいてるおばーさんっ!
ここを見てみい! いったいぜんたいなんのために、
バスルームに洗濯紐がついていると思っているのだッ!!!

心の中でわめきつつ、おっさんパンツを干す。ぱんぱん!
ひとりぶりぶりしながら、ふたたびバルコニーへ。
ええいッ、まったくまったくまったく・・・!!!

どれくらいで怒りがおさまってきただろうか、
どうせ寝られないので、スペンサーを読む。
ガンガン読む。なぜか水もガンガン飲む。
ついでにうんこもする。だいぶスッキリ。はー。

この日も、夜中はしとしと雨だった。
そういう時期なのだろうか。


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